日常の可笑しさと愛しさと。
私は「デイジー」の孤独な暗殺者役のウソン氏にひと目惚れをして、カッコイイ路線の映画を見てきたのですが、トンケには正直ガツンとやられました。もう、ウソン氏をみたら「ホントはトンケなのに・・ぷぷぷ」と思ってしまいます。
その位、ナチュラルに個性的に演じていました。
映画としては、繰り返される日常の中でいかにグローングアップしていくか、ままならない環境の中でいかにサバイブしていくかが、親子の情や仲間達と共に描かれていて好感が持てます。
邦画の「きょうのできごと」やトリフォーの「アメリカの夜」などのさり気ない系がお好きな人にはおススメです。
エンディングの音楽も、気持ちが落ちている時に聴くと、意味不明に力が湧いて来ますよ。
父親に育てられ、トンケ(野良犬)というニックネームの少年は、高校は中退、フリーターになっていた。ケンカがきっかけで知り合った男たちの仕事を手伝うが、夢も希望もないトンケ。そんなとき警官の父が捕らえたスリの常習犯の女性ジョンエと出会う。
トンケ役は『私の頭の中の消しゴム』のチョン・ウソン。チンピラのような男だが心根はやさしく、正義感のあるトンケ役はウソンにピッタリ。『私の頭の中の~』では、武骨な王子様だったが、こんな、ちょっとトボけたチンピラキャラもいける幅広い演技力には驚き。落ちこぼれ男の成長の物語を描きつつも、そのプロセスはまっすぐとはいかず、寄り道ばかり。しかし、現実とはそんなもので、だからこそ共感を得るキャラクターになったのだろう。『友へ チング』のクァク・キョンテク監督は、社会の底辺に生きる男たちを描くのがうまく、不器用だけど必死に生きる姿が、見る者の心を熱くする。本作もまさに然りである。(斎藤 香)