リアルな高校残酷史
邦題は「青春通り」と名づけられているが、型通りの韓流ラブロマンスを期待している向きは
失望するかもしれない。何せ原題は「残酷史」なのだ。
舞台は軍事政権下の韓国の高校。大学に行けない者は「剰余人間」と呼ばれるような社会(これ
はあまり変わっていないが…)だから、成績の悪い生徒は親からも教師からも落伍者と見なされ、
すぐ殴られる。学校にはベトナム帰りの軍人が常駐していて、問題児たちに焼きを入れる仕事に
精を出している。抑圧された生徒たちの挨拶は唾吐きにガン付けだ。
こう説明すると陰鬱な話のようだが、それは現実が陰鬱だったからで、リアルにこの時代を
描こうとしたら、当然こうなるのだろう。
また、リアルと言えば「コブン」「ベントウ」「カオ(面目の意)」など、今では追放されて
しまった日本語由来の言葉が沢山出てくるのが興味深い。韓国人は「日本語」にも時代を感じる
のだろうか。
一応はお約束のロマンスも挿入されるが、あまり重要ではない。同級生とヒロインが家出した
らしいという噂を聞いた主人公は、ヒロインの家に行き、外から呼んでみて返事がないことに
失望するのだが、それ以上のことはしようとしない。
これがラブストーリーに発展してしまったら、この時代の韓国のリアルな高校生ではなくなって
しまい、観客は白けてしまうのだろう。
最後主人公は番長グループとの決闘で退学になってしまい、フリースクールに通うことになるの
だが、フリースクールの楽しげな授業や、暗い制服ではない明るい私服での通学が、その後
用意されている自由な時代を予感させ、見る者を少し安堵させる。
クォン・サンウが主演する、熱すぎる青春映画。1978年、ソウル郊外で、ブルース・リーにあこがれる高校2年生のヒョンスの日々を描く。こっそりエロ本を売る友人など個性的な連中のいるクラスで、リーダー格のウシクと親友になるヒョンス。通学バスで出会った美少女に一目惚れする彼は、食堂を営む年上女性に誘惑されたりもする。やがて、横暴な上級生とヒョンスが決闘する日が訪れる。
ブルース・リーのマネやバスケットボールなど、サンウの肉体の動きがフィーチャーされているのは、ファンにはうれしい限り。とくにケンカのシーンは、予想以上に壮絶だ。恋には不器用なヒョンスで、サンウが危うさや頼りなさも醸し出し、つくづく多彩な顔を持つ俳優だと納得させる。舞台となる男子高は荒れまくっているが、教師と生徒の関係などに当時の韓国の状況が見え隠れ。学ラン姿の生徒たちの行動は、日本人にとっても違和感なく共感できる世界であり、青春の甘酸っぱさ、力強さ、そして切なさが詰まった、爽快なストーリーである。(斉藤博昭)